東京都新宿区立西新宿小学校

検査ではなく、ディスレクシア
チェックアプリだから気軽に使いやすい

今回のディスレクシアチェックアプリについては、とても取り入れやすいものだと感じています。というのも、私たちは医師ではないので、ある程度子どもたちのつまずきなどの問題に対しては、学習面や普段の生活から「見立て」をしながら慎重に対応していくようにしています。特に、発達障害、学習障害に対して「この子はその傾向がある」というのは、専門家や医師の診断が必要なものです。ディスレクシアの傾向があるかもしれない..と少し気になっている児童に、専門家の診断を促すのは、私たちにとって、少し敷居が高いものになります。このディスレクシアチェックアプリ「読めてる?」は、診断とは別ですが、見立てという部分では、手軽に使えるものだと感じています。

つまずきの原因を知り結果を支援につなげていければ

現在は校長ですが、長い教員生活の中で、つまずきがある子どもたちがいるのを見てきましたが、どこにつまずいているのか?という原因を見つけることは非常に難しく、このディスレクシアチェックアプリが原因を知る材料の1つになればという思いが、今回テストに参加した理由です。可能であれば学校現場でもこのアプリを使いたいと思います。もちろん、教育委員会の可否やプライバシー保護の問題、保護者の同意など、色々な条件が揃った上でだとは思いますが。

学級で何らかのつまずきがある子に対して、困りごとは何か?何か手立てがないか?というのは、私を含め、学級担任も個々に考えていることだったので、今回の結果は参考になりました。ディスレクシアチェックアプリの結果は、【言葉をまとまりとして読む力】【意味を結びつけて読む力】【言葉の意味を理解し、文の意味を捉えて早く読む力】に分けて見ることができるので、子どもたちのつまづきの原因をある程度把握できるよい機会でした。
「問題なし」「やや弱い」「弱い」と3段階で傾向が出たものに対し、私の方では全体の分布を見ました。「やや弱い」「弱い」の傾向は、各学級担任の思い当たる結果と合致していたという声も聞かれました。

ディスレクシアや識字障害という言葉自体は知っていても、ディスレクシアとは何か?どういう部分で困難さがあるかは、私も含め、充分に理解しきれていないことがあります。ディスレクシアの傾向がある場合、どんな学習の時に手助けが必要なのかを、こういう簡単なチェック機能を備えたアプリを使うことで知ることができますね。子どもたちが実際にどんな困難を感じているか、私たち教職員にも認識が広がっていくアプリではないかと感じます。

このディスレクシアチェックアプリは、敷居が低いものなので、学校単位でというよりも、例えば自治体や市、区など、ある程度広い範囲で実施するとよいのかなと思いました。例えば、3年生に進級する際に、一斉に実施するなどと決まっていると、支援が必要な子が埋もれることなく、特別支援につなげられるかもしれません。高学年になってくると、学習についていけないというのは、なかなか如何ともし難い部分があり、支援がだんだん難しくなってきます。

ディスレクシアを含む学習障害は病気や異常ではないが
過度に特殊なことと捉える人もいる

ディスレクシアについて、私たち教員達はある程度知識としてありますが、保護者の認識はまちまちです。お子さんに何らかの困難があって、就学相談を受けているような保護者は、よく調べていますが、それ以外の方は、ディスレクシアとは何かをよく知らないのが現状のように見受けられます。

ディスレクシアを含む学習障害や発達障害は特殊な病気や異常ではないが、特殊なこととして捉えられがちです。保護者の中には、定型発達の子と著しく違うんだと思ってしまう方もいます。定型発達の子であっても、文章を読んだり書いたりする中で、得手不得手は多少持っているものです。学校でも保護者に対して、学習障害や発達障害について伝えていくようアプローチしていかなければいけないと考えています。

何か手立てをしてみて、それが功を奏して
初めて「つまづき」の原因に気づく

昔、教員時代に、国語の時間に、一文ずつ「。」までを順に読ませていくという音読をしていた時、読めないのか、読まないのか、立ったまま黙ってしまう子がいました。あるとき、その子の教科書の漢字、一年生から習った全てにルビを振ってあげたら、読むことができたんです。手立てをしてみて、それが功を奏して初めて「漢字がつまづきになっていたのか」と気がつくことができたという経験がありました。この場合は漢字でしたが、読めないとか読まないことには、いろんな事情が隠されていることがあり、この子もディスレクシアだったかはわかりません。恥ずかしくて読めないという子もいるし、読むべき文章にうまく集中できないということもあるかもしれない。指で読む箇所を辿りながら読んだり、他の部分をマスキングして読む箇所に集中できるようにしてみるなど、何かを試して読めるようになれば、気づくことができます。ですが、試してもうまくいかないような場合は、「どうして読めないのかな?」と、ずっとモヤモヤした状態です。

「読めない」など、できないことははっきり分かるが、
ディスレクシア傾向の子への対応策はなかなか見つけにくい

計算問題ができるが文章題はできないなど、できないことは分かっているけれども原因が何か、ディスレクシアかどうかは、はっきり分からないというのが現状です。支援の方法を探すことは、結構難しくて、困難に気づいても、どんな支援が適切なのかはなかなか判断できないことも多々あります。そういった意味では、学校と家庭とで協力していけるといいですね。

学校現場では、合理的配慮として手助けはできるのですが、専門機関でみてもらわないと、その先の専門的な支援に進めないということもあり、袋小路になっているような感じがします。また、そこが現場の1番の課題でもあります。こちらで困難があることに気づいても、学校側から専門機関の受診を積極的にすすめるというのは難しく、保護者への伝え方も慎重にやっていかなければならないと思います。
逆に保護者から、「読むのが苦手で、宿題が大変だ。音読をどう進めていけばいいか?」などの相談が担任にあると、非常にスムーズに支援につなげていけます。保護者が学校と同じ考えを持って進んで行こうとしている場合には、こちらも、「実は、ディスレクシアという読み書き障害というものがあって、このディスレクシアチェックアプリを使ったところ、こういう結果が出ていました。」と、それとなく結果を示し、学習の方法や宿題の出し方を変えるなどサポートしていけます。ぜひ気になることがあれば遠慮なく相談してもらえると助かります。

教員の考え方はまだ様々で迷いもあるが
合理的配慮としてICTを活用したい

先生によっては書くのが苦手なディスレクシアの傾向がある子には連絡帳を書かせず、連絡事項を書いた紙を渡すなど、個別に対応したり、ICTを活用している例もありますが、まだまだ少ないですね。
「書くこと」に関しては、結構根が深いものがあると感じています。他の教職員と議論をしたことはないのですが、例えば新しい漢字が出てきたときに、何回書けば覚えるかということに科学的な根拠はなく、これまで、教員たちの勘所で3回書けばよい、10回は書かなければ覚えないという先生もいたりと、まちまちです。極端なことを言えば見ただけで覚えられる、1回書けば覚える子もいます。「個々で違うんだ」と教職員全員が共通ではっきり認識すれば、ディスレクシアの傾向がある子は書かなくてもよい、写真で撮ってもよいというふうに変わっていくと思います。現段階では、そこがまだ不明確であり、学級担任がひとクラス30人を一緒に指導していく中では、難しい部分もあります。

書くことが苦手なディスレクシアの傾向がある子どもたちへの対応にしても、どこを区切りとするかが非常に難しいところであり、教職員たちの中には、「やはり書くことを頑張っていく方がよいのではないか」という思いも根強くあります。私個人的にはICTなどを積極的に活用をしていくとよいと考えていますが、「書かないと、余計書けなくなってしまう」という反論があると、私も「書くのが難しいならば写真で撮ってもよい」とは押し切れないところがあります。今年度、コロナ禍の中で、一人一台のタブレットが入り、否応無しにICT化は加速すると思いますが、教える側の教員の意識は、まだ変革できていないと感じることがあります。私たち大人でもPCばかりを使っていると、昔と比べてずっと手書きをするときに漢字が出てこないということもあるので、子どもたちにはある程度書く練習の必要性も説く必要があると考えています。一長一短があることは十分踏まえた上で、ICTを導入していければと思います。

学級担任も、特別支援への専門性を上げていかなければならない

本校は、特別支援教室実施校ではないため、特別支援教室の先生は巡回で、週に2回まわってきます。取り出し授業も、教室への入り込み支援も両方行っています。ディスレクシアを含む学習障害の子よりも、発達障害のADHDの対応が必要な子どもたちの方が本校では多いのですが、対応への課題は色々あり、私も含めて、教員の専門性を徐々に上げていく必要があると感じています。

特別支援の専門家やスクールカウンセラー、巡回のドクターなどのアドバイスは大変意義があり、サポートの手助けになっていますが、最終的には、クラス担任が、その子をうまくクラスの中に溶け込ませていけるようにどう関わっていくかの部分が大きいです。そのためには、私たち教職員が特性をよく理解し、どう働きかければよいかを個々に考えていく必要があります。「学習障害の子にはこうする」というマニュアル的な対応ではなく、その子に本当に必要なことだと理解して、しっかり支援することが、当たり前にできるようにしていきたいですね。そういう子は、先生の言動などを鋭く見抜いたり、遠慮してしまうようなところもあるので、学級担任は学級担任なりに、特別支援への専門性を上げていかなければならないと感じます。

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