1 チェックについて
結果については、「読めない」という状況よりは、「スピードが遅い」ことを示す傾向にありますので、普段の音読や漢字学習の様子で、「読み」に関して少し苦手なようでも、あまり結果を意識しすぎず、気軽な気持ちでお使いいただければと思います。
「読めてる?」の問題は、比較的簡単で、キャラクターと一緒に楽しく進められるよう工夫しています。わからなくても制限時間があり、正誤の結果を出さずに進んでいくので、子ども本人が「できてないな…」と感じないよう意識しています。
「読めてる?」は、読みの能力の一つの要素のチェックでしかないため、結果として「苦手」の傾向が出た場合は、その子の苦手傾向に合わせた学び方を考えていくきっかけと捉えるとよいと思います。
*アルファベットを使う英語などの言語だと、文字と音の対応の複雑さから、「読めない」「音に変えられない」「読み書きができない」という状態が出やすくなります。
思いもしなかった結果が出た時の結果の受け止め方ですが、ディスレクシアの傾向のあるなしにとらわれず、「もともと読み書きの能力は、とても個人差が大きいもの」ということをご理解いただけるとよいかと思います。一般的なスピード以上で読める子どもたちの間でも、個人差があります。また、このディスレクシアの傾向をチェックする「読めてる?」アプリは簡易的なチェックアプリであり、チェックする範囲は「読み」の能力の一つの要素でしかないので、その子の「読み」の能力全体をチェックできているわけではありません。
一部について、「苦手」の傾向が出ただけで、その子の苦手傾向に合わせ、学び方を考えていくきっかけと捉えるとよいと思います。各地域のディスレクシアを含む学習障害(LD)や、発達障害の専門家に相談して支援の方法を探していけると良いでしょう。
2 ディスレクシアについて
しかし、検査をして要因を知った上で特別な訓練や指導、支援をしても、「読めるけれど遅い、書けるけれど遅い」という部分については、みんなと同じようにというところまで達成するのは難しいのが現状です。ある程度は「読み」の力が上がってくることもありますが、根本はなかなか変わらないものです。しかし、みんなと同じように紙の本を「読める」必要があるのか?紙と鉛筆で「書ける」必要があるのか?というと、個人的にはそうではない気がしています。
ディスレクシアの傾向があっても、読み書きしやすいように環境を整え、本人が「学びたい」という気持ちをしっかり持てる状況になれば、「ゆっくりでも、読んで理解することは楽しい」「学ぶことは面白いな」「もっと学んでいきたい」という気持ちが出てきます。その意欲が出るようにサポートしていくことこそが大切だと思います。
「読み書きが遅い」ということが要因となって、子ども自身が「学ぶことの楽しさ」を感じられないのが1番の問題です。ディスレクシアの傾向があり、同じように「読み」の能力に問題を抱える子でも、学びを広げていける子もいれば、そうでない子もいます。上手く学ぶ意欲を保てるよう、周りの大人が学ぶ楽しさを教え、感じさせてあげられる状況になると良いですね。
また、学習環境が整わない状況が長く続くと、支援が始まっても、成果が出る前に「勉強は嫌だ!」と本人が拒否してしまうこともあります。ディスレクシアの傾向が見られたら、なるべく早く支援をスタートし、学習環境を整えてあげることが必要です。もし可能であれば、専門機関にも相談しましょう。ゆっくりでも自分の力で読めるようになり、自分なりのスピードで読め、「学ぶことは楽しい」と、学習意欲が湧いてくるよう導いて行けるとよいと思います。
ディスレクシアの傾向が見られたら、まずは、専門家や専門機関で検査をすることで、「読めない」要因をある程度把握していけることがあるので、お住いの地域に専門機関があれば、専門家にご相談の上、より詳しい検査を受けていくことをおすすめします。
3 支援について
| 漢字を読むのが苦手 | ふりがながあるとだいぶ読みやすくなることがあります。 |
|---|---|
| 漢字を書くのが苦手 |
書き取りで、文字が崩れてしまうことがあります。 また、「とめ、ハネ、はらい」など、細かい部分をうまく書けないことがあります。 |
| 拗音・促音が苦手 | 「ちゃ ちゅ ちょ」「しゃ しゅ しょ」などの拗音、「きって」「けっか」など、つまる音である促音の、書き方や読み方を何度も聞くことがあります。 |
| 文節を探すのが苦手 | 文章の中で、文節(区切って読む場所)や言葉のまとまりを見つけることが苦手なことがあります。 |
専門機関で詳しい検査を受けるのに予約がなかなか取れず、時間がかかる場合もあるかと思います。専門機関に行く前に、学校でも学習環境を整える配慮をしてもらえますので、遠慮せずに、学校に働きかけていくことが必要です。まずは学級担任の先生や特別支援教室の先生に相談することから始めていきましょう。子どもにとって、一番身近な学校の先生にも「読み」の力が弱いということに気づいてもらい、その子の学びやすい環境を一緒に整えていきましょう。
読み書きが苦手だという子供の状況が分かると、どうしても保護者や先生は、「読めない」「書けない」という状況自体をなんとかしようとしてしまいがちです。そこも大事ではありますが、例えその子の状態が改善しなくても、環境を整えることを通し、学習の理解度の方へも目を向け、子ども自身が「新しいことを知ることは楽しい」「学ぶことは面白い」と思ってくれるよう、大人から働きかけていくとよいと思います。
検査結果を元に専門的な見立てをしてもらうと、特性に合わせた支援や指導を受けることができます。
学校の先生にもディスレクシアの傾向がある状況や、弱いところを理解してもらって、学校でできる支援をお願いしていくと良いでしょう。
4 学習環境を整える参考例
読み書きが苦手な状況がわかると、保護者の方の中には、「読書が足りないのか?」「漢字の書き取りや音読の練習が足りないのでは?」と心配される方がいますが、そのようなことは考えにくいです。「読み書きの弱さを補完できる方法は?」と質問されることも多くありますが、同じように「読めない」という状態でも、要因によって支援や訓練の方法が違うため、検査して要因を調べる前に、あまり訓練的なことを試そうとしたり、改善しようとせず、まずは専門家に相談することをおすすめします。
ご家庭では、 Q3やQ11などを参考に、ディスレクシアの傾向がある子の特徴を理解し、「弱い部分を改善しよう」という捉え方ではなく、本人の意欲を損なわないようにすることに重きを置き、読み書きの力が弱いままでも、どうしたら学びやすくなるのか?を考えてあげるとよいでしょう。まずは、学びやすい教材を使うなど、楽しく学べる環境を整えていくことから始めていきましょう。
① 漢字が読めないことがあるので、読みがな(ルビ)を振ってあげる
今回の「読めてる?」アプリでは、かな文字の「読み」の力についてしかチェックしていませんが、かな文字の読みが遅いと漢字を正しく読む力が伸びにくい傾向にあります。
アプリ以外で、漢字の読み書きが苦手であるかを確認し、苦手であれば読みがな(ルビ)を振ってあげると良い。
(*学校の先生の中には、子どもに自分で読めるようになって欲しい、自分で読めないと困るという気持ちから、読みがなを振らずに慣れていくことを求める先生もいますが、きちんと説明をして合理的配慮を求めていくとよいです。)
② 先生へ合理的配慮の相談をする。特に音読の際に配慮してもらえるようにお願いする。
ディスレクシアの傾向がある子は音読が苦手になることが多くあります。苦手であれば、クラスの中で音読を当てないようにする、当てるとしても、短いところを読ませるなど、先生へ配慮をお願いする必要があります。いつも読めなくてつまずいたり、恥ずかしい思いをすることで、本人が大きく自信を損なうことがないようにしましょう。
③「書き」よりも「読み」の練習を先にする
「読み書き」どちらもが苦手であれば、まずは「読み」の練習を優先しましょう。ディスレクシアの傾向がある子どもたちにとって、読めない状態なのに、書きの指導をされるのは、とても過酷です。宿題も、漢字の書き取りなどより、音読の練習を優先するとよいでしょう。
学校での指導では、先生にとっては「書き」の練習の方が取り組ませやすく、やらせやすいという状況もあるため、「読み書き」がどちらも苦手であると、「書き」の指導が優先され重点的に行われる傾向があります。(*学校や先生によっても指導の順番や方法は違います)英語の学習をすることを考えると想像しやすいと思いますが、まだ読めもしないのに、書けるようにしようというのは、ハードルが高く、やる気がなくなってしまいます。
読めるけれど書けない、書くのが遅い。という状況であれば、もちろん書きの練習から始めていきます。
④ デジタル教科書を活用し、読み上げ機能・ルビ機能を積極的に使う
ICT教育が始まり、全員に一台ずつのタブレットやPCが配られるようになっているので、ぜひ、デジタル教科書を活用しましょう。デジタル教科書はディスレクシアの傾向がある子どもたちと、とても相性が良いツールです。読み上げ機能を使う。背景の色を変える。文字を拡大縮小する。フォントを変える。など、色々な機能が最初からついているので、どのような環境であれば学習しやすいか、試してみましょう。
⑤ 読みやすくなる道具を使う
前後の行を隠して、読みたい場所に集中できるようにする道具がリーディングトラッカーです。(ディスレクシアの傾向がある子どもたちによく使われています。)どこを読んでいるかわかるように、ずらしながら読んでいくようにします。
今回のチェックでは問題がないと出ることが多いのですが、「文字が動いて見える」「背景の白い部分が眩しくて見にくい」という子には、カラーフィルターを使ってみるなど、読みやすくなる道具を探していきましょう。
⑥ 学習意欲が落ちないように気をつけて声かけをする
「もっと速く読んで。」「まだここをやってるの?」など、スピードを求めるような声かけはディスレクシアの傾向がある子どもたちの自信を損なってしまいます。文章を書くときに、文や文章の意味はあっているが、語尾を間違える傾向が出やすいので、その部分を指摘せず、意味を理解できていることに目を向け、褒めてあげると良いでしょう。
書き取りで、文字が崩れてしまう子には、「とめ、ハネ、はらい」をあまり厳しく追求せず、パーツが全部揃っていて、配置が整っていれば、多少細かいところができていなくても良しとしてあげて欲しいと思います。